小林牧場物語

酪農王国北海道のなかでも、こだわりの酪農実践家として知られる北海道・江別の小林牧場。

 札幌市と江別市のちょうど境目、野幌森林公園に隣接する緑豊かな環境に小林牧場は位置します。牧場主である小林惟彦さんは、2代目オーナーとして牧場の拡充を続け、ここ江別市西野幌に70 h a (サッカーコート約109面分)の敷地のほか、近郊の長沼町にも50 h aの牧草地やデントコーン(飼料用トウモロコシ)畑を耕作しています。

 昭和56年にこの地に落ち着く前は、それまで営んでいた牧場が宅地開発や高速道路建設で移転を余儀なくされるなど、高度成長時代の波にも揉まれました。仲間がどんどん離農していくなか、「やめる気はまったくなかったよね。どうやって、いい酪農をするかだけを考えてきたよ。お金がなければ知恵を使って工夫もしてきました」。小林さんが取り組んだのは、まず土づくり。牛に良質なミルクを出してもらうには、牛が健康でなくてはなりません。そのためには栄養バランスのとれた餌が不可欠です。それには、餌となる牧草の土壌にまず目を向けなければなりません。「ここはね、土地そのものがいいんだよ。牧場のまわりは豊かな原生林でしょ。大きい木が育つところは土がいい証拠。そこにね、年1回、牛糞でつくった堆肥を入れて、土をさらに肥やしてやるの。良い土は微生物が活発に働いて、栄養たっぷりの草を育てるんだ。いってみれば、自然のサイクルを大切に守りながら酪農をさせてもらっているわけだよね」。牛の糞が土を元気にし、そこから生えた草が、健康な牛を育てていく。この自然の循環を途切れなく守り続けた結果が、おいしい牛乳となって表れるのです。また、牧草やデントコーンなど牛の主食を輸入などに頼らず、自ら育て確保することは、そのまま飼料の安全性につながることはいうまでもありません。

 さて、牛たちはどんなふうに暮らしているのでしょうか。牛舎をのぞくと、あるものは餌を食べていたり、あるものは麦わらのベッドでお昼寝していたり。牛舎をのんびり散歩している牛もいます。そう、すべて牛本意なんです。小林牧場が、牛を鎖で繋がないフリーストールというスタイルを採り入れたのは、およそ20年前。小林さんは酪農先進国アメリカまで視察に赴き、牛にストレスのかからないこの飼育方法を自身の目で確かめてきました。牛たちは日々おおらかに過ごしているせいか、近寄るといっせいに人なつっこい表情でこちらを見つめ、撫でてよ、とばかりに鼻先を向けてきます。小林さんをはじめ、世話をするスタッフの愛情もそうさせるのでしょう。「牛の性格がおだやかになって、乳量も2割ほど増えたかな」。

 朝と夕方、牛たちは決まった時間になるとミルキングパーラーという搾乳施設に入り、お乳を搾られます。搾乳の時間は牛の健康状態を一頭ずつチェックし、ケガや病気はないか、また、健康状態や乳量に見合った餌を分析するという大切なひとときでもあるのです。

 餌の話をもう少しすると、小林牧場では3割程度の配合飼料のほかは、サイレージや乾草が主食。サイレージとは、牧草やデントコーンを乳酸醗酵させた栄養満点の醗酵飼料。自社農場で育てた牧草やデントコーンを刈り取り、サイレージをつくるのは手間がかかることですが、自分たちのやってきたことがそのまま質の高い牛乳になって戻ってくるのだと、小林さんは胸を張ります。

安全・安心・おいしい牛乳づくりに人生を賭ける小林牧場オーナー。牧場が大都市札幌と隣り合わせでもあることから、環境対策には人一倍配慮。2人の息子の後継者にも恵まれ、時代を担う牧場のあるべき姿を追い求める日々。

広々としたフリーストール牛舎の中で、
快適に過ごす牛たち。
衛生管理も徹底させています。

牛たちがもっとも楽しみにしている餌の時間。
栄養バランスのとれたサイレージや乾草が主食。